猛獣大脱走 「評価 B」
ある晩、北ヨーロッパの動物園で異変が起こった。昼間はいつも通りの行動をしていた猛獣達が突然暴れだし、警備員に襲いかかってきたのである。更に動物達は檻を突き破り、夜の繁華街へと躍り出た。狂暴化した猛獣達が人々に襲いかかり、街は大パニックに。また同じ頃、車の中でイチャついていたカップルが下水管から這い出してきたネズミの大群に襲われ、無残な死体と成り果てるという奇妙な事件が起こっていた。そこで警察がこれらの事件の関連性を追求した結果、何処かの工場が流した化学物質が水道に流れ込み、それを飲んだ動物が暴れ始めたということが判明した。だが化学物質の効果が切れるまでには時間がかかるため、動物達による恐怖の夜は簡単には終わってくれなかったのである。
ある意味、実物系モンスターパニック映画の頂点の一つと言える作品。なんとネズミや犬は勿論のこと、ライオンや白熊、象までもが生身の役者と共演し、そして容赦無しに人間へ襲いかかってくるのだ。当然ながらライオンの集団に人が食い殺されるシーンなんかは途中で人形に入れ替わっているものの、その迫力はなかなかお目にかかれるものではない。まさにバイオレンス映画の本場であるイタリアならではの映画と言えよう。
更に本作では、狂暴化した動物が市街地に出るということで、都市部ならではのパニックが見られる。滑走路を象が占拠したことで飛行機が着陸に失敗し、オーバーランした飛行機は変電所に突っ込んで大爆発。そして都市全体が停電に…というものや、線路の真ん中に停車した地下鉄を虎が襲撃したりと、多種多様な災害で観客を楽しませてくれるのである。
おまけに動物達と同じ水道水を飲んだ子供達が大人を惨殺するという「ザ・チャイルド」さながらなシーンもあり、本作では人間も猛獣の一つとして扱われている。水道水を飲んで狂暴化したのが一部の子供だけというのも変な話だが、「人も動物の一種」というごく当然な事実をこのような形で見せ付けることで、単なる猛獣パニックを越えた恐怖を本作では感じることができるのだ。
だが本作、話の締め方がかなりいい加減である。逃げ出した猛獣達は殆ど回収されない状態で終わってしまうし、あれほど引っ張っていた化学薬品を流した犯人についても、「現在調査中」というテロップが出るだけだ。また夜の街が舞台ということもあってか所々映像がやたらと暗く、何をやっているのか分からないような場面の存在するのも問題だと言える。しかし本作は先に述べた本物の猛獣による迫力や都市部のパニック描写が非常に楽しく、モンスターパニック映画としては良作の部類に入る映画であった。
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