モメンタム                  「評価 C」
物理教師をしているザックは、普通の人間としての生活を送るために自分が念動力を使えるのを隠し続けていた。だがショッピングストアに立ち寄った際に強盗に遭遇し、店員を助けるために生徒の前で念動力を使ってしまう。これでもう大学には行けない、と思ったザックは荷物を畳み、他の地域に移り住もうとした。だがそんな彼の前に、アディソンと名乗る謎の男が現れる。彼は政府の人間で、超能力を用いた犯罪組織を壊滅させるべく長年戦いつづけていたのだ。ショッピングストアの防犯カメラによる情報からザックが超能力者であるのを知ったアディソンは、ザックを脅迫して犯罪組織に潜入させ、内部から切り崩そうと試みる。ところが犯罪組織の誕生には、以前アディソンが担当していた超能力者開発計画「モメンタム計画」が関係していたのである…。
本作の特筆すべき点は、何と言っても主人公への感情移入のしやすさだろう。何せ対立している二つの組織が、どちらも極端な悪役として描かれているのである。主人公が超能力者であると知り、彼を脅して犯罪組織に潜入させる政府の人間。同胞の迫害に憤りを感じ、人類に対し戦争を引き起こそうと画策している犯罪組織。どちらもそれなりに事情はあるのだが、それさえも微塵と吹き飛ばしてしまう程の悪役ぶりで、こんな連中の戦いに巻き込まれた主人公には同情せずにいられないのだ。
(しかも最後は超能力者の存在をつい先ほど知ったばかりの女刑事に「力を持った理由を見つけたいんでしょ」などと知ったような口をされ、新たな戦いへと赴く主人公。つくづく哀れな奴だ…)
この主人公の悲哀具合がいい本作ではあるが、肝心の超能力の方はあまり誉められない。超能力者の住んでいた部屋に曲がったフォークや円ノコギリが無数に突き刺さっていたり、主人公や犯罪組織の連中は自分が超能力者であるのを隠すために防犯カメラの向きを念動力で変えるのだが、どいつもこいつも既に超能力を使ってからカメラの向きを変えているので全然隠す行為になっていなかったりと、とにかく妙な描写に溢れているのだ。しかも事実上の最後の敵が名も無い狙撃手(超能力者に非ず)で、バトル映画としての魅力も薄い。結局本作は、超能力を持ってしまった主人公の悲劇としかならないのである。

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