バグド          「評価 C」
今は閉鎖された研究所では、かつて一人の科学者が人間の能力を引き出す新薬の開発に取り組んでいた。だが科学者は研究結果を焦るあまり、自分の体を使って新薬の実験を行ってしまう。初めは科学者の知能も格段に上昇し、眠る必要が無くなるなど良い成果が出たものの、次第に科学者の体は変質していき、最終的に虫のような顔をした奇形人間となって死んでしまった。新薬は、投与された者の遺伝子を変えてしまったのだ。それからしばらくした後、この新薬は危険だということが明らかになったので業者に頼んで処分してもらうこととなった。ところが業者のトラックが新薬を積んで走行していたところ、向かいから来た殺虫剤の輸送をしていたトラックと衝突してしまった。両者の積荷はバラバラになって地面にばら撒かれる。すると向かいのトラックを運転していた業者が、新薬の入ったタンクを殺虫剤のタンクと間違えて持って行ってしまったのである。その後、新薬のタンクは害虫駆除業者の手に渡り、ゴキブリやコオロギの駆除をするために散布された。薬を浴びた昆虫達は遺伝子が変容し、巨大化して人々に襲いかかる…!
本作は、「悪魔の毒々モンスター」シリーズでお馴染みのトロマ社が96年に製作したモンスターパニック映画だ。そのためかどうか、冒頭で新薬の開発に失敗した科学者の悲劇を延々と続けておきながら、話の本筋はそれと全く関係が無いところで進展し、まるで二本の映画を観たような気分にさせてくれるという非常に個性的なプロットになっている(単に纏まりが無いとも言うが)。
またトロマ映画の最大の特徴である悪ふざけはこの映画でも如何なく発揮されており、駆除業者は捕まえたゴキブリでジオラマを作り、その出来とゴキブリの大きさを競う「害虫コンテスト」への参加に熱を燃やしている他、巨大昆虫に襲われる家の主である詩人は聞いているこっちが恥ずかしくなるようなベタベタな詩を次々と作り出してくれる。
更に巨大昆虫をみんなで踏みつけてグチャドロの個体に変えてしまったり、知能が高くなった昆虫の策略にかかってしまい爆殺された男の死体が脳味噌剥き出しの状態で壁にべったり張り付いたりと、お馴染みのグロシーンも満載になっている。
ところが本作、これだけトロマ映画の要素を詰め込んでいて楽しませてくれるものの、肝心のモンスターパニックとしては全くの不消化のままで終わってしまう。「家の周りを巨大昆虫に囲まれた! 何とか脱出の方法を考えなくては!」という展開で観客を引っ張ってくれるのだが、最後は特に対策を立てることもなく、ただ走って家を脱出するのである。この期待外れ具合もまたトロマらしいと言えるのだが、やはりここは虫をド派手な方法で蹴散らしてグログロな展開にして欲しかったものだ。

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