火を噴く惑星 「評価 B」
ソビエト政府の援助の元、金星探検に向かった宇宙飛行士達。金星は恐竜や原始生物が支配しており、文明が存在していないように思われた。ところが海底を移動していた時、彼らはルビーを用いた見事な彫像を発見する…。
1989年、日本で催されたソビエトSF映画祭において、「不思議惑星キン・ザ・ザ」などと一緒に上映されていた本作。あの独特すぎる雰囲気によってカルト化した「キン・ザ・ザ」と違って、50年代アメリカで星の数ほど作られた宇宙探検映画と似た匂いのする本作だが、何よりも特筆すべき点は、金星のあまりにも無茶苦茶な描写だろう。
まず第一に本作、金星に海が存在するのである。御存知の通り、金星の表面温度は100度を軽く越えており、水は地表どころか大気中にも殆ど存在していない。なのに海中に魚が泳いでいるし、時には雨まで降ってくる(製作当時の時点で、これくらいは明らかになっているはずなのだが…)。そしてこれに呼応するが如く、本作の金星では人食い植物が探検隊を襲ったり、人形アニメのブロントサウルスや翼手竜が姿を現したりするのである。
この金星の風景はまるで地球の太古そのものであり、更に探検隊が金星地表でヘルメットを脱いでも平気でいる場面まで存在するので、本作は別惑星への移動を時間移動になぞらえているのではないかともとれる(実際、劇中で進化論についての議論がたびたびなされている)。どの惑星でも同じような時間軸を持っており、同じように生物が進化している。本作がそういう世界観を持っていると考えればあまりに地球そのものな金星の描写も納得できるのだが、それでも着ぐるみの恐竜が陽気そうに跳ね回っている様子には笑わずにはいられない。アメリカ式宇宙探検映画に哲学的要素を加えたことで不思議な感じに仕上がった本作は、やはりソビエトならではの映画なのである。
GO TO TOP!!