ピラニア              「評価 C」
行方不明になったカップルを探して欲しいという依頼を受け、捜索隊の男女が深い山中を進んでいた。軍の施設を発見した彼らは、カップルがこの中に入ったのではと推測し、無断で中に入ることにした。施設内に人の姿はなく、ただホルマリン漬けにされた生物が棚に並べられているだけだった。やがて施設の脇に貯水池を発見した彼らは、まさかと思い水を抜いて見る。するとその底には、カップルの白骨体があったのである。そこへ現れる軍の研究者。彼は大戦中に開始された生物兵器の開発を現代に引き継いでおり、冷水や海水の中でも棲息するピラニアを貯水池の中に放していたらしい。数日前の晩、施設に忍び込んだカップルは貯水池で泳ごうとしてピラニアの群れに襲われたのである。そのピラニア達が、水を抜いたことにより近くの川に放たれてしまった。慌てた彼らは、ピラニアの被害を未然に防ごうと川下に向かう…。
「殺人魚フライングキラー」こと「ピラニア2」の前作に当たる本作だが、話の方はこちらも負けじ劣らじ平坦なものだった。戦争中に行われていたピラニアの研究が現在も引き続き行われていたとか、その事を隠蔽しようと軍が動き出すとか、色々な要素が組み込まれているものの、結局は「祭りを中止しろと訴える主人公と彼の話を信じない主催者の対立」の典型パターンに集約されており、これらの要素がさほど生かされていたとは思えないのである。
また本作、ピラニアの退治シーンにも不満が残る。ピラニアを退治する手段と言うのが、排水ポンプから汚染物質を流し、川の水をピラニアが住めない環境にするという環境保護団体からクレームがつきそうな代物なのだが、なんとこの手段が執られた後、ピラニアが死んだようなカットが一切登場しないのだ。確かに効果に期待が持てる作戦とは言い難いし、ラストカットへの繋ぎも考えなければならないのだが、これでは命がけで作戦を決行した主人公があまりにも浮かばれない。たとえ形式的とは言え、何匹かのピラニアが水面に浮かぶカットぐらいは欲しかったものだ。
だがこれらの欠点を補うかのように、本作にはこの手の映画の最大の見せ場と言うべき「人の集まっている場所にモンスターの大群が押し寄せるシーン」が二度も用意されていた。どちらのシーンもピラニアによる殺戮が徹底的に描かれており、観る側としては映画二本分のクライマックスを味わうことが出来るのだ。他にも人形アニメで動く実験生物とか、途中で挿入される「大怪獣出現」の戦闘シーンとか、話に全く関係の無い部分でのサービス精神に富んだ本作。全般的に地味ではあったが、この大盤振る舞いが嬉しい映画だった。

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