ファイアーウォール 「評価 D」
或る男の放火によって、山岳地帯に火災が発生した。そこで消防隊が出動し、火災を収めるために行動を開始するのだが、山間の街では祭りが近いということもあり、町長は道路封鎖などの指示に従おうとしなかったのである。非協力的な彼らに失望する消防隊。しかもそこへ追い討ちをかけるかのように、放火犯は別の場所でも火災を発生させたのである…。
女性消防士を主人公に据え、山火事に際しての彼女らの活動に焦点を当てた本作は、アクション主体の「ファイアー・ファイト」なんかと比べると山火事を正面から取り扱っており、正統派の山火事映画と言えるだろう。しかし本作、放火の犯人とか鎮火の手段とか以前に演出のベタさ加減がやたらと鼻についたので、それほど映画にのめり込むことができなかったのだ。
どれくらいベタかと言うのを説明するために、これを如実に現している部分を一つ紹介しよう。
映画の中盤、反抗期である主人公の娘は恋人と一緒にロスへ家出しようとするが、山道を通ろうとしたのが運の尽き、たちまち炎に囲まれてそれどころでは無くなってしまった。そこで娘は一応母親の仕事を見ているので火事に対する心構えもあったので、恋人を率いて安全な場所へ避難しようとする。だが足を滑らせたことによって彼女は崖下に転落し、迫り来る炎に対し身動きがとれなくなってしまうのだ。恋人は崖の上におり、すぐには助けに来てくれそうに無い。彼女は母親に反抗した自分を悔やみ、「母さん、ごめんなさい」と泣き叫んだ。するとその瞬間、彼女らを探しに来ていた主人公がいきなり煙の奥から姿を現すのだ。
あまりにも出来すぎな展開に、見ている側としてはずっと娘の様子を監視していたのではないかとつい勘ぐりたくなってしまう。他にもラストのダンスシーンでは、今までのダイジェストを挿入して観客を感慨深い気持ちにさせようとしたりと、これでもかと言うほどベタベタな本作。あからさまに怪しい空気を漂わせていた奴がやっぱり放火の真犯人だったというのは裏の裏をかかれた気分にさせられたが、この点以外については演出が上手く作用しているとは言いがたい映画だった。
ところで本作のキャッチコピーに「全てのレスキュー隊員に捧ぐ」とあるが、実際のレスキュー隊員ならば、団体行動から外れて娘の救助へ向かい、その上クライマックスで美味しいところを掻っ攫っていった主人公よりも、地道に草刈りをして炎の進行を食い止めようとしていた他の消防士達を支持することだろう。映画の内容を考えると、あまり相応しいとは言えないコピーである。
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