八仙飯店之人肉饅頭             「評価 S」
マカオで知り合いを惨殺した男が、高飛びした先の香港で料理店を営んでいた。しかしその料理店はかつて別の一家が経営しており、それがいつの間にか男のものになっていたのである。周りにはこの事を怪しむ者もいたが、男が客に愛想良く振る舞うのでそれほど追求されることもなく、男はいつも通り料理店の名物である肉饅頭を作り続けていた。この饅頭は肉が美味しいということで客からの評判も上々だった。毎日のように肉饅頭を買いに行き、美味しそうに食べる客達。饅頭の肉が、男が殺した店主一家のものだとも知らずに…。
当時のホラー映画界で香港人肉ブームを巻き起こし、「人肉天婦羅」「香港人肉竹輪」など数多くの便乗映画をリリースさせた本作。そしてこの映画自体も第一作と同じ監督によって全三作に及ぶシリーズとなったが、結局第一作の壮絶さを越えるものは作ることができなかった(特に第三作についてはアンソニー・ウォンが出ないので論外である)。本作は、監督自身でも越えられないほどのインパクトを持つ作品だったのである。
前半部分で極悪非道な殺人鬼の様子を徹底的に描いておきながら、彼が捕まった後は皮下脂肪に水を注射されるという見るに耐えない拷問をされたり、刑務所で他の囚人達から血尿が出るほどのリンチを受けたりと、逆に殺人鬼が可哀想になってくる程の「やりすぎ」な裁きが行われる。こんな展開だから映画の中では誰も救われてなんかおらず、どの登場人物に入れこんでも観客は結局嫌な目を見るのみだ。アメリカのスプラッター映画が馬鹿な若者を皆殺しにしていくというプロットで、少なからず世間に対するストレスの解消という意図を込めた作品が多い中、ここまで観客を不快にさせることに拘った映画というのもある意味斬新だった。
ただ「エボラシンドローム」もそうだったが、人肉料理を作る目的が単に死体を処分するためなので、カニバリズムの映画としては嗜好の色が薄く物足く感じられるかもしれない。だがそれでも淡々と行われる人体解剖のシーンなど、本作にはグロテスクな見せ場が多く、いつ観ても面白い(と同時に黒い気分にさせてくれる)スプラッター映画の名作である。

GO TO TOP!!