ビヨンド・ザ・リミット 「評価 B」
変わった職業の取材を行っていた女性記者が、墓守をしている老人の元を訪れた。彼は墓に眠っている死体の由来ならば大抵知っていると言い、ついさっき見てきた墓に眠っている死体のことを女性に語り始めた。だが墓守の物語はやがて、「永遠の心臓」を巡って人類が繰り広げてきた、何百年にも渡る血みどろの戦いへと発展していく…。
アルバトロス・コア。かのB級映画界の大御所アルバトロスフィルムの中から、特に過激な作品を扱うレーベルとして派生したのがここである。以前から「ファニーゲーム」や「大脳分裂」などの変態映画をリリースし続け、その手のファンを泣いて喜ばせてきたこのレーベルだが、この度予告編などでも堂々と「新生アルバトロス・コア!」と宣言し、よりディープな方向へと新たな変革を遂げることとなった。そしてその記念すべき第一弾としてリリースされたのが、この映画「ビヨンド・ザ・リミット」なのである。
そんなわけで本作は、予告編から見ても極度のバイオレンス描写に溢れており、まさしく新生アルバトロス・コアの方針を明確に示しているように感じられる。そこで私は期待して本作を観たのだが、実に意外な出来映えの作品であった。
墓守は最初に、現代に起こったギャング団の内部抗争について語り始める。復讐劇と永遠の心臓を巡る攻防が二重に展開するというものなのだが、はっきり言ってこの部分はそれ程面白くない。残虐描写についても動けない人間を一人ずつ殺して行くばかりでカタルシスの欠片も見られず、やたらと冗長に感じられてしまうのだ。
これが終わると、次に15世紀に起こった異端者の弾圧とそれに抵抗する男の話が始まる。こちらは話のテンポも良く、残虐描写抜きにしても普通の中世映画として十分観れる内容だったのだが、いかんせん悪徳司祭の最期が爽快感が欠けるのが残念に思われた。
ところが本作、この二つ目の話のラストから急激に面白くなってくる。話の主役が倒れたことにより全てが終わったかと思わせておいて、舞台は急に何百人もの裸の人間が犇いている地獄へと移る。そしてつい先ほど死んだばかりの悪徳司祭が、地獄でこれ以上無いと言うほどの残酷な刑罰を受けている様子が映し出されるのである。悪徳司祭が行ってきた非道な行為を今まで散々見せられてきた観客は、話が終わった後のこの場面によって一気に救われる。悪徳司祭の現実世界での死に方が呆気なかったのはこれを強調するためだったのか、と思わず唸ってしまう。
更に、映画はまだ終わらない。司祭の責め苦が映された後、舞台は再び冒頭の墓地に戻るのだが、そこで新たに知らされる事実によって二つの話が残してきた伏線が全て回収され、三つの異なる舞台が完全に一つに纏まってしまうのである。退屈な最初の話からこの映画に付き合ってきた身としては、今までの断片が全て直結していたという構成に痺れずにはいられない。
ということで本作は、冒頭が弱いので引き込む力に些か欠けるものの、ラストのどんでん返しが実に楽しい映画であった。
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