フライング・ヴァイラス 「評価 B」
南米アマゾンでは、道路開発に携わっているアメリカの連中と原住民達が対立していた。そこで米軍は毒蜂を用いて反対する原住民を殲滅していったのだが、森の中に隠していた蜂の巣箱を女性レポーターが偶然にも発見する。秘密を知った女性レポーターを生かしてはおけない、と軍は彼女に発砲する。銃弾を受けて倒れるレポーター。だがそこへ原住民達が軍に襲い掛かり、彼女は一命を取り留めた。その後、病院に運ばれるレポーターだったが、米軍は秘密を守るために執拗に彼女を狙う。一方その頃、レポーターの治療を行った医者は、彼女が普通なら死んでいるはずの傷を負っているのにも関わらず生きていたことに疑問を感じていた。そして彼女の体に蜂の刺し傷があった事から、医者は一つの結論に辿り着く。森にいた蜂に治癒能力があり、だから彼女は助かったのだと。本当は原住民が手当てしたから助かったに過ぎないのだが、このように誤解した医者は大発見をしたと確信し、森に赴き米軍の目を盗んで巣箱を入手した。そして学会に発表するべく、巣箱をアメリカ行きの旅客機に積んでしまったのである。何も知らないで離陸する航空機。だが乱気流の衝撃で巣箱が開け放たれ、機内の人間に蜂の大群が襲いかかってきた。それを知ったアメリカは機密保持のため、旅客機に悪性の伝染病が蔓延しているから着陸させてはいけないとのデマを各空港に流し、この旅客機を空中で封鎖した。どの空港も着陸させてくれないという事態に直面し、空中で右往左往する旅客機。そうしている間にも蜂の群れは乗客を襲い、猛毒を受けて意識不明の人間が続出する。偶々この旅客機に乗っていた夫からこの事態を聞かされたレポーターは、蜂の解毒剤を持っているらしい原住民の村を探すのだが、そんな彼女の前に米軍が立ちはだかった。
本作は低予算なためか、あまりにも稚拙なVFXで描かれた飛行機や蜂が見られる。他にも軍が原住民の村を襲うシーンでは他の映画から拝借してきたようなカットが度々出るし、決して綺麗な映像を拝める映画とは言えない。
だが本作、蜂と飛行機パニックというどう考えても噛み合わない2つのジャンルを違和感無く纏め上げている、なかなかの快作だったのである。米軍を徹底して悪役に描いているので、話の構造が実に明確で分かりやすい。また証拠隠滅のために軍が追撃ミサイルを飛行機に放ったシーンではダミー電波を放つことによって回避するという、非現実的ではあるが飛行機パニック好きのツボを突いた解決手段を見せてくれる。更に蜂の大群が黒豹を瞬時にさらって行くという蜂映画好きにはたまらないシーンもあるし、要するに両方のジャンルが好きな人間を十分に満足させられる内容になっているのだ。
蜂を見つけてしまうまでの過程とか機内の蜂を追い払う手段とか話の粗は探せばかなり出てくるのだが、映画が観客を引き込んでくれる力を持っているのでそれも大して気にならない(蜂を機内に持ち込んだ張本人に何のフォローも無かったのはさすがにどうかと思ったが)。蜂映画と飛行機パニック、どちらのジャンルにおいても久々の良作であった。
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