ファングス                   「評価 B」
生物パニック映画の中でも、比較的頻繁に製作される蛇や昆虫の映画と比べると、どうもネズミの映画はあまり製作されないようだ。特殊変異をしなくても雑食で肉も平気で食べるネズミが、なぜ無理矢理な設定で作られた「人喰い蟻」とかよりも製作されないのだろうか? その答えは簡単。昔の場合は本物のネズミを集めるのが大変だったためで、今はCGが作りにくいからである。
例えば蜂をCGで表現する場合、元々高速移動する生物だから細かい蜂の形を作らなくても宙に舞わせるだけで十分蜂らしく見せることができる。だがネズミだとそうはいかない。ずっと素早い動きしかしない蜂と違い、ネズミの動きには緩急がある。そこでネズミは一匹一匹細かく丁寧に描いていかなければならず、いざ描いてみると「マラブンタ」に出てきた蟻のように違和感バリバリの変な生き物になりがちである。しかし本作に登場するネズミは本物と見まごう程に丁寧に描かれており、製作者の手間を窺わせる見事な出来だった。
ドイツのフランクフルト市は、ゴミ清掃所のストライキによって町中がゴミで溢れ返っていた。だがそれに伴い、ゴミを食料としていたネズミが大量発生したのである。数を増やしたネズミは市長官邸のパーティーに乱入するまでになり、町中は瞬く間にパニックに陥った。しかもネズミは病原菌を持っていたため、ネズミに噛まれた人間は次々と発病する始末。そこでネズミ退治のプロが雇われたのだが、汚染された肉を匂いで嗅ぎ分けてしまう狡猾なネズミたちを前にして、彼らが立案した様々な作戦もことごとく打ち破られてしまった。しかも増えに増えたネズミは電線を噛み切ってしまい、フランクフルトは大停電になってしまう。そこで業を煮やした退治屋達はネズミの一匹に発信機を付け、彼らの本拠地を探ることにしたのだ。そして見つけた本拠地には、地面を埋め尽くす程の大量のネズミがいたのである…。
「ネズミが電線を噛み切る」というのがネズミ映画の中でも何気に斬新な本作。さすがにネズミがCGなために「ラッツ」のような本気度100%の演技は望めないものの、その代わりに本作は伝染病などでネズミの別の面での恐怖を描いており、しっかり欠点が補われているのが良い。またCGのネズミも本物の習性を十分に理解した人間が作ったのか、ちゃんと不自然さを感じさせずに動いてくれる。ネズミ退治の方法が納得し難かったものの、上質なパニック映画であった。

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