肉喰怪獣キラーツリー              「評価 B」
「悪魔のサンタクロース」ではサンタクロースが、「キラーホビー オモチャが殺しにやって来る」ではプレゼントのオモチャが、「バトルヒーター」ではコタツが、そして「キラー・スノーマン」では雪だるまが、それぞれ世にも恐ろしい殺人鬼となって人々を恐怖に陥れた。さすがにもう殺人鬼に成り得る冬の定番アイテムは存在しないだろう──と高を括っていたが甘かった。なんとこの映画、意思を持ったクリスマスツリーが人間を殺しているではないか! 映画人たちの想像力の逞しさには、ほとほと感心させられるばかりである。
山間の町ヘイゼルヒルにクリスマスが訪れようとしていた。新しくスキー場も完成し、住民たちは誰もが皆明るい顔を浮かべる中、ただ一人、森林警備隊のマークだけは恐怖に怯える日々を過ごしていた。以前人を喰らう新種のモミの木と戦った彼は、それ以降樹木恐怖症に陥ったのである。おまけに妻は彼に愛想を尽かしてかつての恋人に走り出し、マークの生活は崩壊寸前。ところがそんな折、人喰樹木による新たな事件が発生した。国有林に無断で侵入した木こりたちが人喰樹木とは知らずに何本かのモミの木を持ち去り、それを町中に売りさばいていたのだ。一斉に暴れ出したクリスマスツリーに、町中から悲鳴が沸き起こる。マークは友人のマックスと協力して、人喰樹木たちを始末するために行動を開始した…。
この映画に登場する人喰樹木は、根を足のように動かして走り回り、棘のような葉を機関銃の如く飛ばして人間を襲う。木とは思えない素早い動きには、ただただ圧倒されるばかりだ。しかもクライマックスで巨大な親玉ツリーが出てくるとなっては、モンスター好きとしては喜ばずにはいられない。樹木たちの暴れぶりが実に楽しい作品だった。
だが本作で一番悲惨なのは、そんな人喰樹木に殺された人々よりも、スキー場の客たちである。リフトに乗っていた彼らだが、途中で配線が切れてリフトが停止した。すぐに配線が回復されるだろうと思っていたら、登場人物たちの興味はその直後に起こった殺人事件の方に移ってしまい、その後数日間忘れ去られた挙句にリフトに座ったまま凍死。「コング」の置いてけぼりにされた女性と並ぶ、あまりにも惨い結末を迎えたキャラクターとして長らく記憶に残ることだろう。
ところでこの映画、原題が「TREE2」なので、どうやらマークと人喰樹木が最初に遭遇する一作目があるようだ。また本作のラストでは「TREE3」に続くことが明確に記されており、この映画はシリーズの中継ぎ的位置づけにあるらしい。本作を見る限りでは人喰樹木はシリーズごとに進化を重ねていくみたいなので、他のシリーズもぜひ観てみたいものだ。
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