ヒーロー・イン・チロル 「評価 B」
ヨーデルだ。本作は、あのヨロレイヒ〜♪のヨーデルをこよなく愛する旅の男が、訪れた村の危機をヨーデルパワーで救ってしまうという痛快馬鹿ミュージカル映画である。
冒頭、いきなり「ヨロレイヒ〜♪」と現れる主人公。彼は相棒の鷲(全然活躍しない)と共に国中を旅する身だったのだが、訪れた谷底の村がすっかり気に入ってしまい、現在はその村の洞穴に滞在しているのだ。ところがある日、主人公はたまたま通りかかった村長の家でこの村をリゾートに開発してしまおうという計画(この計画の話し合いの際にも村長達のヨーデル大合唱が聴ける)を聞いてしまった。そこで主人公は、
「この美しい村を開発されてたまるか、ヨロレイヒ〜♪」
というわけで、愛する村娘や村の自然のために村長やそのドラ息子達と徹底して戦う決意を固める主人公。だが一方、そんな主人公を恋敵とするドラ息子は彼相手に猟犬や銃まで持ち出してきたのである。しかし、そんな敵も持ち前のヨーデルパワーで一掃した主人公。しかし、村長の陰謀はこれだけには終わらず、次なる作戦を考えていたのだ・・。
と、本作は実に単純な内容である。しかもそれが120分近くまで続くのだから、観ていると多少辛くなることもないわけではない。だが本作、作品の出来がかなり「インド映画」に近い(とは言っても、インド映画と違って本作には濃密なラブシーンもある。性描写の薄いインド映画との大きな違いと言ったら、ズバリこの点であろう)ものの、劇中ではヨーデルという音楽の様々なレパートリーを見せてくれており、ヨーロッパの山奥に多少偏見を抱いている私のような人間には「ヨーデルって、ヨロレイヒ〜♪だけじゃないのか!?」と、非常に認識を新たにしてくれるのだ。そういった点からも本作は、ミュージカルの新しい世界を切り開いてくれた貴重な作品であった(でも内容は馬鹿だけど)。
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