ラッツ                「評価 C」
ニューヨークのデパートで、客の女性がネズミに噛まれるトラブルが発生した。そこでデパートの従業員達は業者に頼んで建物を調べてもらったところ、今は使われていなかった部屋がネズミの巣と化していたことが判明する。しかもネズミの巣はここだけではないようで、今回のトラブルを皮切りとして、ニューヨークの各地でネズミの大量発生による事件が頻発するようになった…。
同名の実物系パニック映画とは別物の本作。大量発生系のネズミ映画としては「ファングス」以来の新作であるが、いまいち盛り上がりに欠ける作品だった。本作では「ファングス」同様、ネズミに噛まれた人間が病気に苦しむ描写がなされている。ところが抗体探しで話を盛り上げていた「ファングス」に対し、本作は病気に対し何の対策も打たれないまま、ただネズミを始末しただけで終わってしまう。その後も噛まれた人々は病気に苦しんでいるのを考えると、あまりに喜べない結末を迎えるのである。
更にこの手の映画の定番と言える「祭りが近いから退治に非協力的な人間」が本作でもお決まりのごとく登場する。だが結局祭りが始まる前にネズミ退治が完了してしまうので、これまた定番の「クライマックスで酷い目に遭う非協力的な奴」の姿が拝めず、定番の展開に走らないことへの賞賛以前に、ストーリーのカタルシス不足に対する不満感が残ってしまう。その上クライマックスでは、ネズミの群れの中に1分以上入っていたヒロインが顔に少し傷を負っただけで助かっているなど、御都合主義な面も多々見られるのだ。脚本の不出来は否めない作品である。
しかし20世紀フォックス製作なだけはあり、本作はテレビ映画ながらもネズミのCGに関しては「ファングス」さえも凌ぐトップクラスの出来映えである。特に排水溝の中からネズミの大群が噴水の如く溢れ出すカットなんかはビジュアル面でのインパクトが絶大で、実物のネズミとはまた違った迫力に満ちている。
本作は実物の迫力や話の緊迫感の代わりに、圧倒的な映像表現によって他のネズミ映画との差別化に成功している映画だった。

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