ラスベガス大火災                「評価 B」
ロスアンゼルスやニューヨークなんかは災害映画がよく舞台とするところだが、ラスベガスを舞台にしたパニック映画とは珍しい。それはそうと、ラスベガスと言ったら大富豪を始めとして平凡な日常に退屈した連中が集まる町。当然火事なんか起きたら暇人な彼らが放っておくわけがなく、きっとよってたかって火災見物をしようとすることだろう。本作はさすがラスベガスを舞台にしているだけあって、そんな野次馬根性丸出しの人間達の様子が見事なまでに描写されていた。
ラスベガスのホテルが新装オープンした。当然一階はカジノになっていて、ホテルには新装初日から多くの客と報道陣が押し寄せていた。ところがそんな時、そのホテルで原因不明の火事が発生したのである。幸い火事が発生したのが上の方の階だったので、ほとんどの客は無事に避難できたのだが、最上部のスイートルームに泊まっていた客たちは逃げるに逃げられなくなっていた。非常階段は炎に包まれ、エレベーターでも燃えている階を無事に通過することは出来ない。そこで残された客たちは取りあえず下の階から迫る炎から逃れようと、最上階めざして進むことにしたのだが、危険なところを通るたびに一人、また一人と人間が炎の餌食となっていった…。
本作は「一つの難関ごとに一人ずつ人間が死んでいく」という、まさにポセイドン・アドベンチャー形式とでも言うべき展開の脱出パニック映画である。こういう形式は一種のデスゲーム感覚で物語が進行していき、誰が最後に生き残るのかというのに重点が置かれるのだが、本作ではその描き方がよりゲーム性に富んでいた。なんと逃げる客の中に報道カメラマンを置き、彼らが逃げる様子を全米で生中継するという非常に大胆な手法をとっているのだ。劇中ラスベガスで暇を持て余している人間達はバーのテレビでこの生中継を観ながら、「こいつが放火したんだと思う」や「こいつは死にそうにないな」など、おもいっきり野次馬根性丸出しで他の客と話し合っている。彼らにとって逃げる客達はあくまで他人であり、過激なゲームの参加者でしかないのである。
あれだけ揉めていた「火を付けた犯人の正体」が少々腰砕けだったりするものの、それでも本作は脱出パニックが完全にゲームとして昇華されていたのが評価できる。火災映画としては一風変わった良作である。

GO TO TOP!!