ラン・ローラ・ラン                  「評価 A」
これぞまさに、アイデア1本の映画である。何種類かのラストがある映画というのは今までにも数多くあったが、今までのそれらの映画は普通、別々のビデオに収められていたり、別々の時間に上映していたのものであった。ところが本作は違う。81分の上映時間の中に3種類の展開を用意していて、登場人物の全てに別々の結末を用意しているのだ。主人公はもちろん、他にも主人公の周囲の人間や、道ですれちがうだけの関係無い脇役にまでも別のラストが用意してあって、3本の同じ設定の短編映画を観ているような気分になれる作品だ。
ベルリンに住むローラの元へ、いきなり恋人のマニから電話がかかってきた。マニは不良グループの一員で、ボスから麻薬取引の大任を任されたのだが、その取引で手にいれた10万マルクを地下鉄に置き忘れてしまったのだ。このままでは、マニはグループのボスに殺されてしまう。それを知ったローラは、マニの命を救うために20分内に10万マルクの大金を集めようとして、父親が経営する銀行へと走るのだが…と、ここまでは同じ展開で話が進む。ここからは3つの展開に分かれて、それぞれの結末へと至るわけで、実に単純明快。しかも、3つのラストのうち2つは主人公にとってバッドエンドとなっているのだが、主人公がハッピーエンドになるパターンでも、他の脇役がトンでも無い目にあっていたりして、全員に必ず幸せな結末が訪れないところもいい。まさに人生は諸行無常。という印象を残す作品であった。

GO TO TOP!!