ヴァルカン              「評価 C」
フィリピンの或る森では、翼竜を神として崇める民族が暮らしていた。普段は森で狩猟をして生活している彼らだが、その様子を興味深げに眺めている一人の少年がいた。彼の名はぺドリング。日頃養父から苛められていたぺドリング少年にとって、彼らの狩りを見るのが唯一の楽しみだったのである。そんなある日のこと、近くの火山が噴火して大量の土砂が周囲一帯に流れ込んだ。幸いにもぺドリングの家族や狩猟民族の人達にさした被害は無かったが、この時の土砂は火口にあった翼竜の卵までも一緒に流してしまった。ぺドリングは偶然にもその卵を発見し、産まれてきた翼竜を大事に育てることにした。ところが翼竜の存在を知った悪い大人達が、密かにぺドリングを狙っていたのだ…。
少年と動物が共に触れ合い成長していくというプロットのファミリー向け動物映画は沢山あるが、本作における動物は巨大翼竜である。幾ら銃弾を受けても平気な体に加えて、火炎放射なんていう殆ど怪獣レベルの機能付き。これでは単なるファミリー向け動物映画で終わるはずがない。そう、「カッタ君物語」の再来だ! …そんなわけで本作、ファミリー向けな内容のくせに巨大翼竜が大人達を殺しまくる場面が存在するという、「カッタ君物語」さながらな映画である。だが本作は「カッタ君物語」とは違い、殺される大人達というのが災害のドサクサに紛れて一般市民に強盗行為を働いている連中で、決して敵味方の区別なしに殺しているわけではないのに加え、ヴァルカンは全ての人間を友達とは思っていないこと、またそれ位やってもおかしくないと思わせる東南アジア独特の空気もあって、見ていてそれほど違和感を覚えることはない。おかげで偽善的ムードが薄れ、翼竜の暴れっぷりを純粋に楽しめるようになっていたのは評価できた。狩猟民族が神と崇める翼竜をぺドリングが私物化し、我侭し放題を尽くすのは見ていてスッキリしなかったが、動物映画としては無難な出来である。

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