アトミック・ドッグ            「評価 B」
町外れの原発で放射能漏れによる事故が発生した。施設内にいた職員達は速やかに避難したが、そこで飼われていた一匹の犬が置き去りにされてしまった。その後事故は収まったものの、閉鎖された原発内では逃げ遅れた犬が未だに生き延びていた。しかも放射能を浴びたことにより、知能の高いスーパードッグへと変貌を遂げていたのである。
「未確認生命体MAX」同様に、犬の化け物が人々を襲うこの映画。様々な動物の遺伝子を組み込んで多彩な能力を見せてくれたMAXに比べると、本作の犬は罠を仕掛けるのが精一杯で「ベートーベン」並の狡猾さしか持っておらず、それといった特殊能力を兼ね備えてないのがモンスター映画としては少々味気無い。
だが逆に、MAXではラストで触れられているだけだった特殊生物としての哀愁が本作では全編を通して掘り下げられており、よりドラマ性の高い作品になっていたのである。
本来の棲家である原発から離れられない犬は、孤独の中で長い月日を過ごしていた。そこへ来たのが、愛犬を連れて原発の近くまで来た少年だった。少年とその犬はすぐに帰ったが、原発犬は匂いを追って少年の家に辿り着く。そして家の犬を誘い出し、共に原発の中で生活を始めたのである。だが放射能漏れで閉鎖したこの原発は、今も尚高い放射能値を記録していた。2か月後、やっと見つけた相棒の犬は放射能に体をやられ、原発を抜け出して少年の家に帰ると原発犬との子供を産んで死亡してしまった。その後少年の家ではこの二匹の子犬が育てられていた。再び孤独に戻った原発犬はそれを目撃し、子供を奪い取って共に暮らすべく家族に襲いかかる…。
実に犬の哀愁に満ち満ちた話であり、愛犬家なら涙をボロボロ流すこと請け合いだ。放射能が未だ溢れ続けている原発跡に入った家族が全員無事だったりと御都合主義な部分も結構あるが、ドラマ性に優れた秀作である。

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