オゾンクライシス 「評価 C」
アメリカ西海岸で、奇怪な事件が続発していた。パイロットが突如失明して飛行機が墜落したり、浜辺に無数の鯨が打ち上げられていたり、どれを取っても前例の見られない事件である。科学者らはこれらの事件をオゾンホールの仕業と断定し、西海岸の住民に避難を呼びかけようとするのだが、政府は混乱を避けて彼らの話を信じようとしなかった。だがオゾンホールは東へと移動を始め、被害を拡大させていく…。
海洋汚染や地球温暖化と並んで、主な環境問題として取り上げられるオゾン層の破壊だが、前者二つを取り扱った映画はそれなりに作られているのに対し、オゾン層の破壊を取り扱った映画はおそらく本作が世界初である。所詮紫外線が強くなる程度では失明したり火傷を負うのが関の山で、どうしても画的に地味なものになってしまうから映画が作りにくいのであろう。
そこで本作は、オゾン層の破壊に従来予期されている以上の現象を起こさせることで、見事なパニック映画に仕立て上げてしまった。本作で強い紫外線が起こす異常現象の数々は、まさに脅威そのもの。紫外線に頭をやられた鳥が群れをなしてビルに激突するわ、紫外線で繁殖能力が強くなった虫や蜂が大量発生して街を恐怖に陥れるわ、「おいおい本当かよ」と言いたくなるような災害が次々と発生するのである。オゾンホールが閉じた途端にこれらの災害が沈静化するのは出来過ぎに思えてならないが、とにかく貪欲にパニック描写を盛り込もうという姿勢は悪くない。
ただ本作、パニック描写に時間を割くあまり、主人公と周りの人間達の話が疎かになっているようにも思える。登場人物の死がずっと放っておかれて、終盤になって漸く主人公達に知らされるなんていうのは、その最たるものだろう。数多くのパニック描写を盛りこむことで地味な映画になるのは回避できたが、今度はかえって話に纏まりが無くなってしまった。やはりオゾン層の破壊というのは、パニック映画に向かない題材なのだろうか。そんな事を考えさせてくれる映画だった。
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