大津波 「評価 D」
進行する温暖化はグリーンランドの氷山を溶かし、その影響で巨大な津波が発生することが判明した。デンマークやオランダ、ドイツ沿岸部などの低地帯が全て波に飲み込まれるらしく、環境団体は早速住民の避難を呼びかけるのだが、権力者らの圧力もあって住民らはその話をなかなか信じようとはしない。そうしている間にも巨大な波は接近し、遂にドイツ沿岸部を飲み込んでしまった。
「災害の発生を警告する専門家と、与太話と決め付けて聞こうとしない権力者」という構図は、最早パニック映画のフォーマットの1つと言っても過言ではないだろう。津波を取り扱った本作でもこの構図が成立しており、専門家の言葉が正しくて権力者は酷い目を見ることになる…というお決まりの締め方もされる。ただ本作における専門家というのが、かの過激派環境保護団体グリーンピースであり、彼らの思想にちっとも同意できない身としては権力者が酷い目を見ても大して爽快な気分にはなれないのである。まあこの辺りは私見が混じっているので別にするとしても、それにしても本作は評価しがたい映画だ。
主人公は崩壊寸前の家族で、これまたパニック映画の定番なのだが、なんと本作は家族関係が修復されるどころか、より一層壊されてエンディングを迎える。ここから先は少しネタバレになるが、4人と1匹の家族のうち生き残ったのは2人だけで、残りは波に呑まれて溺死したりプレッシャーに耐え切れず服毒自殺したりと散々な最期を迎える。しかも生き残った息子は目の前で犬が死んだことにショックを受けて精神崩壊しており、こんな家族の末路を目の当たりにした父親はただ愕然とするばかり。何とも暗く重苦しい展開であり、感動などの要素を期待して本作を観ると痛い目にあうこと間違い無し。数あるパニック映画のなかでも、究極のバッドエンドを迎える異色の作品であると言えよう。
この点に関しては評価の分かれるところだろうが、他にも本作には酷い点が多すぎる。氷山の崩落によって発生した大津波はグリーンランド沖から円状に広がって行くのだが、科学者の被害予測によると津波に襲われるのはドイツ、デンマーク、オランダの三カ国だけで、もっと近くにあるはずのアイスランドやイギリスは何故か全く被害を受けない。このように本作は異色である以前に、パニック映画としての突込み所が多いのである。
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