アーミクロン            「評価 D」
ビデオゲームのヒロインを英雄と称えるような冴えない青年が、悪ガキ達と一緒に軍の敷地内へキャンプに来ていた。しかし一緒にキャンプと言っても青年の役割はパシリに過ぎず、悪ガキ達から薪集めを命じられ、森の中を歩き回ることとなった。森の中で青年は、赤いペンダントが落ちているのを見つけ、こっそり胸ポケットにしまいこんだ。そして薪集めを再会しようとするのだが、謎の発光物体が森の中に落下したのを目撃した彼は、その正体を探るべく仕事も忘れて一人森の奥へと足を踏み入れた。暗い森を歩き回った青年はやがて、怪しいスーツを身に纏った二人の女性に遭遇した。彼女らは全宇宙の支配を企む帝王ルーカスの手によって故郷の星を滅ぼされた宇宙人で、彼の次の狙いである地球へ警告しに来たのである。ところがルーカスの軍は強大で、このままでは地球に勝ち目は無い。伝説の超人アーミクロンに変身できるペンダントも、二つ無ければ効果を発揮しないと言うのにその内一つを森の中に落としてしまったのだそうだ。だがその時、青年の胸ポケットに入っていたペンダントと彼女らの持っていたペンダントとが反応し、青年の体は伝説の超人アーミクロンに変身した。青年が拾っていたペンダントは、まさしくアーミクロンに変身する力を秘めていたものだったのだ。アーミクロンの力を得た青年は無敵のヒーローとなり、次々とやってくるルーカスの刺客をバッタバッタと薙ぎ倒して行く。
「パワーレンジャー」で日本の戦隊ヒーロー番組の特撮シーンを流用して大ヒットを飛ばしたアメリカが、今度は韓国B級映画界の巨匠シン・ヒョンレが95年に製作したSFヒーロー映画「パワーキング」の特撮シーンを流用して新たなヒーロー作品を作り上げた。それが本作「アーミクロン」だ。元ネタの「パワーキング」ではシン・ヒョンレ監督が自ら主人公を演じ、超戦士パワーキング(本作で言うところのアーミクロン)に変身して大活躍をしていたが、そこは「パワーレンジャー」を製作したアメリカ。ちゃんと主人公の変身前の姿はナヨナヨしたヒーローオタク(白人)に変更されており、他にもキャストの多くは典型的なアメリカ人になっているなど、ところどころでアメリカの観客向けのアレンジが施されていた。この変更については全く問題が無いのだが、本作は「パワーキング」の特撮シーンを何の修正も無しに流用しているため、アメリカが舞台のはずなのに市街地の看板がハングルだらけになっているのはさすがに突っ込まずにはいられない。
また本作は話の繋げ方が物凄く下手で、昼のシーンと夜のシーンを何の考えも無しに繋いでいるためアーミクロン達が飲まず食わずで丸々二日間も森の中をさまよっているという実に奇妙な事態が起こっているのである。
他にも中盤では上映時間を引き延ばすためなのかどうか知らないが、凡そ10分もの時間をかけて主人公が関与しないアメリカ軍と宇宙人達との戦いを延々と映している(しかも映る飛行機は他の映画や空軍映像から拝借してきた物ばかり。まあ他の映画から特撮シーンを流用しているこの映画だからある意味当然とも言える)。勿論その間アーミクロン達は1カットたりとも登場せず、この映画の主役は誰なんだと疑問に思わずにはいられない。
折角特撮シーンは凝っていて面白いのに(アーミクロンが空を飛ぶカットでワイヤーがモロに見えたりもするが)、編集がこれでは何もかもが台無しである。同じ性質の作品である「パワーレンジャー」シリーズは元ネタのストーリーを大胆に改竄することで独自の評価を得ているのに対し、本作は改竄の仕方があまりにも杜撰で、馬鹿映画として見る以外に楽しめない作品になっていた。

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