ヴィシャス            「評価 C」
農村に近い大学で、コウモリの研究を行う教授がいた。教授は何のためか知らないが攻撃的なコウモリの開発に執心しており、彼の研究室では音波で制御された無数のコウモリ達が檻の中でおとなしくしていた。だがある朝、学生達が大学に来ると、広間に教授らしき男の死体が横たわっていたのである。早速捜査に乗り出した警官ルイスは、空になったコウモリの檻と現場に居合わせた獣医の話から、教授が逃げたコウモリに襲われたのだと考えた。そこで逃げたコウモリの捜索を始めるルイスと獣医だったが、突然地主のカール・ハートからの圧力によって捜査ができなくなってしまう。カール・ハートは後日開催されるアップル祭りに託けて外来客に住宅地を売ろうと躍起になっており、変な騒ぎで村のイメージが崩れてはまずいと思っていたのだ。ところがそうしている間にもコウモリの大群に襲われる人間が続出し、被害は拡大していく。そしていよいよ訪れたアップル祭りの日。祭りを楽しむカール・ハートや村人達だったが、会場のホールには無数のコウモリが潜んでいた…。
本作はコウモリを凶器に使った連続殺人を描いた映画であるが、開発のために住民を無理やり立ち退かせる地主や村の利益のために主人公の反対を押し切って村祭りを開くところなど、後年の「リーサルレギオン」との類似点がたくさん見られる。多分自分の利潤のために地元の人間を蔑ろにするという権力者像は、アメリカでは悪代官のごとく広く認識されているのだろう。
さて本作だが、同じ蝙蝠映画の「BATS」と比べると目新しさに欠け、それほど面白い映画とは言えない。第一に本作、主人公がピンチに陥るシーンが殆ど無いのである。洞窟内で発煙筒を使ってしまってコウモリの大群に襲われる場面では、村の人間を襲っているコウモリと偶然にも別の種類だったので何の災難にもならない。村祭りの会場を殺人コウモリの大群が襲撃する場面では、主人公達がアルミ片をばら撒いてコウモリの方向感覚を狂わせているので(本当にこんなことができるのか疑問だ…)、村の人間達も含めて大した怪我もせずに終わる。この点が斬新といえば斬新だが、それ以上に映画としての盛り上がりに欠け、決して評価できるものではないのだ。
そんな本作の見所は、病院内で主人公とコウモリが一騎討ちを繰り広げるシーンだろう。大量発生型モンスターパニックにおいて、その中のほんの一匹と戦って苦戦する主人公というのも珍しい。あまりにも地味な本作において、妙に存在感を放っていた場面である。

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