エボラシンドローム 悪魔の殺人ウイルス 「評価 S」
チンピラのカイは、ボスの奥さんに手を出したことを責められてボコボコにされた挙句、自分のペニスを切り取ることを命じられる。それに怒ったカイは逆にボス達を皆殺しにした上、ボスの娘にガソリンをかけて焼死させようとした。ところが今から火を付けようという時になって騒ぎを聞いた人が駆けつけ、カイは無念ながらもボスの娘をそのままにして逃亡した。その後、香港を脱出したカイはアフリカの中華料理店で働いていた。だが香港の時と同様に、カイは店長夫妻から虫けらのような扱いを受け、次第にストレスを溜めて行ったのだ。そんなある日、カイは店長と共に豚肉を仕入れようと原住民の村に向かった。しかし原住民達は皆ぐったりとしており、どうも様子がおかしい。一応豚肉を手に入れた店長とカイは店に戻ろうとしたのだが、その途中で店長と別れたカイは苦しそうに倒れている女性を発見。カイは溜まったストレスを発散すべく、即座に女に飛び掛った。ところがその時、女はカイの顔面めがけて強烈なゲロを放った。ゲロまみれになったカイは怒り、女を豪快に撲殺した後店長と合流し、店へと戻って行った。その後、いつも通りに店で働くカイ。だがだんだんと具合が悪くなって行き、遂にカイは店の真ん中で倒れてしまった。実は先日訪れた原住民の村はエボラに襲われており、カイの顔にゲロを放った女もエボラ患者だったのだ。エボラに感染し、高熱にうなされるカイ。彼を治療する金を惜しんだ店長夫妻は、カイを道端に捨てようと計画する。だがその時、カイは急に復活を果たした。なんとカイは一千万人に一人と言われるエボラに対する免疫の持ち主で、あっという間にエボラウイルスを克服してしまったのである。計画を聞いていたカイは店長夫妻とその従兄弟を殺害し、彼らの肉を使って大量のハンバーグを作った。そして翌日、他の従業員達に「店長一家はしばらくの間本国に帰った」と告げると、昨日のハンバーグで新メニュー「アフリカン・バーガー」を売り始めた。このメニューは美味いと大評判で、カイはようやく平和な生活が送れると思っていた。ところがそんなある日、成長したボスの娘が偶然にもカイの店にやって来た。ボスの娘はカイの顔を覚えており、見破られたと悟ったカイは彼女を殺そうとしたのだが、そこへ別の客がやってきたのでカイはボスの娘を逃がしてしまった。一方その頃、アフリカン・バーガーを食べた客達が次々とエボラに感染し、アフリカの街はパニックになっていた。カイはこの騒ぎを避け、且つボスの娘から逃げるために香港に戻る。そして店長夫妻から奪った金で悠悠自適な生活を送ることにしたのだが、彼を介してエボラは香港でも蔓延していった…。
アンソニー・ウォンという俳優がいる。「八仙飯店之人肉饅頭」で変態メガネデブを演じて観客に多大なインパクトを与える一方で、「風雲ストームライダーズ」で剣聖を演じて千葉真一と熱いバトルを繰り広げたりと、色々と芸の幅が広い人である。そんな彼が人肉饅頭の製作チームと再び手を組み、またもや変態メガネデブを演じて見せたのがこの映画だ。人肉饅頭でもアンソニー・ウォンの変態演技を十分に観ることはできたが、あの作品は実話を元にしているという制約があったため、映画が纏めの段階に入るにつれて彼のパワフルさが減退していったのが残念だった。しかし本作は完全にフィクションなので、もう誰も彼を止められない。解放された彼の凄まじさを語るため、本作のクライマックス部分を引用しよう。
殺人犯であることが公にばれてしまい、警官隊に囲まれてしまったアンソニー。周りの連中は皆武装しており、もし実際の人物(例えば人肉饅頭の主人公とか)だったら間違い無く投降しているところだろう。だが本作のアンソニーは違った。自分がエボラに感染しているのを良い事に、警官隊に対して唾を吐き散らすことによって難なく包囲網を突破したのである。その上、銃で撃たれると傷口から出た血を口に含み、霧吹きのように追っ手に吹き付ける。麻酔銃を撃たれると針が刺さった部分を抉り取って難を逃れる。こんな凄まじい彼だから、死に方も人肉饅頭のような地味なものではない。全身丸焼けになった上に車ではね飛ばされ、更に四方八方からの銃弾の嵐を浴びるという、実に念の入った殺され方をするのだ。
虐殺、カニバリズム、そしてギャグ担当の警察達。こういった人肉饅頭と全く同じ要素を入れながら本作がウイルスパニック映画として違和感無く成立しているのは、偏にアンソニーの変態演技のおかげと言っていいだろう。ボスの娘がクライマックスに絡んでこない、中華料理店の店主達が殺されたのが発覚したことについての説明が薄い、など話に関しては結構粗が目立つ。だが突き抜けた残酷変態描写が圧巻なこの映画は、やはり評価に値する作品なのである。
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