アリゲーター 愛と復讐のワニ人間          「評価 C」
数多い映画の中で存在感を発揮するためは、やはり「このシーンを観られるのはこの映画だけ!」というような強烈な個性が必要だろう。そういう意味では、この映画は他のワニ映画の中でも突出した内容になっている。なにせ話の主役とも言うべきワニが、登場する際に地震や嵐を起こすわ、水面から3m近くジャンプするわ、人間に呪いをかけるわ、おまけに人間に変身するわと何とも欲張りな設定なのだ。こんなワニはまず他の映画ではお目にかかれない。だが問題は、そのワニを基にしてどれだけ面白い話が作れるかなのだが…。
東南アジアのとある村に、ワニ退治を得意とした流れ者とその相棒がやって来た。村人達の目の前で手早くワニを始末した流れ者は、村長から長年村を苦しめている巨大ワニの退治を依頼される。退治すれば村長の娘と結婚できるというので、早速ワニ退治に乗り出した流れ者は、死闘の末になんとかワニを追い払った。ところが明くる日から、村長の娘はワニの呪いを受けて声が出せなくなってしまったのである。流れ者と同じくワニ退治に燃えていた村の老人の言葉から、あのワニを倒すには七種類の金属による合金で作った銛を使うしかないとのアドバイスを受けた流れ者は、銛を完成させて再度ワニ退治に挑む。
本作はさすがタイ製作なだけあって、生物パニック映画の重大な要素であるスプラッター描写に関しては申し分無い出来になっている。また話の方も、劇中でワニを神聖視しているあたりから「ワニが超能力を使ってもおかしくない」という雰囲気を漂わせていて悪くない。ところが本作、カメラワークなどで非常に粗が目立ったりやたらと同じカットの使いまわしが多かったりなど、全編に渡って非常に陳腐な印象を受けてしまうのだ。特にカメラワークの点に至っては、ワニから逃げ惑う村人のシーンが何が起こっているのか全く理解できなかったりと、それが原因で恐怖感を削いでいたのが惜しまれる。おまけにラストは今までの死闘が嘘のようなハーレム状態で幕を閉じたりと、本作は折角盛り上げた緊迫感を製作者自ら壊しているような点が随所に見られる映画だった。

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