エンド・オブ・ザ・ワールド 「評価 B」
近未来、アメリカと中国が起こした核戦争によって、北半球の大部分で放射能汚染による死の地帯となってしまった。そこで一部の人類はオーストラリアへと移住したのだが、汚染はどんどん広がって最早オーストラリアにも迫りつつあったのだ。ところがそんな中、汚染されているはずの北米のアンカレジから、オーストラリアへと謎のメールが送信されたのである。そのメールには「希望を捨てるな」というメッセージが! そこでメールの真偽を確かめるべく、オーストラリアに移住していたアメリカ海軍達は潜水艦を駆ってアンカレジに出発したのだが……。
「渚にて」のリメイクである本作は、一見普通の「ヒーローが人類を救う滅亡モノ」と見せ掛けておいて、実はヒーローというものが存在しない映画である。放射能が迫ることで次々と倒れていく人々。汚染されている地域だと知っていながらも、敢えて故郷のサンフランシスコに残る男。汚染されて苦しんで死ぬ前に、安楽死や心中という形で自ら命を断つ家族。その彼らの全てが、既に人類の「滅亡」というものを受け入れている。そして海軍は、自らの家族を死に追いやった原因である核戦争を後悔している。本作は低予算のために戦争のシーンというものが一切出てこないものの、戦争が終わった後の彼らの描写がなかなか上手く、下手な戦争映画よりも戦争の恐ろしさを明確に伝えている作品でもあるのだ。
また本作、滅亡モノにしては珍しく一家族のみに視点を置いて描かれている。そのため余計な登場人物が一人もおらず、じっくりと彼らの行く末を見ることが出来るのだ。終末感を演出するためか背景の雲をスピードアップさせていたりと、所々滑っていると思われる演出があるものの、本作は滅亡映画の佳作である。
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