オクトパス 「評価 B」
「楽しくなければ映画じゃない! 闘わなければ男じゃない!」
そんな映画ファンのために、「爆闘!!!!!!BATTLE!映画祭!!」が3月31日から開催された。この映画祭のプログラムは全て、外国からの掘り出し物映画によって構成されており、それらのほとんど(いや、全部かもしれない)が日本未公開なのだ。そして本作は、この熱い映画祭で一番最初に上映された「怪獣映画」である。
昔、キューバ危機の時に、大量の放射性物質を搭載した東側の潜水艦が、米軍の放った魚雷によって撃沈された。そして潜水艦は積んでいた放射性物質もろとも、深海の底へと沈んでいったのであった…。
時は流れて現代。ブルガリアの警察として平和に暮らしていたターカーは、国際爆弾テロリストのキャスパーと市街地で戦い、仲間を1人犠牲にしつつも彼を逮捕する事に成功した。すると、それを知ったアメリカのCIAはターカーに、ブルガリアからキャスパーを護送してほしい。と依頼してきたのである。依頼を受けて、さっそくアメリカ行きの潜水艦にキャスパーを連れて乗り込むターカー。潜水艦の乗務員には、金髪美女のリサを始め、艦長、黒人マッチョ、半分キ○ガイっぽい技術士など、個性豊かな連中が揃っており、潜水艦は順調にアメリカへと進んでいた。
ところがその頃、キャスパーの仲間のテロ軍団が大西洋上の豪華客船を乗っ取り、潜水艦にいる彼を救出しようと動き出していた!
そんな事は露知らず、潜水艦はアメリカへ向けて一直線に進んでいく…はずであったが、突然トラブルが発生した。昔沈んだ潜水艦の放射性物質によって巨大化したタコが、あろう事かターカー達の潜水艦を襲撃したのである。タコの目的はただ一つ、食料となる人間だ。あっという間に潜水艦は触手によって穴を開けられて海底に沈み、パニックに陥った乗組員は全員、艦内を逃げ回った挙げ句にタコに喰われてしまった。しかもそのドサクサに紛れ、キャスパーが手錠を外して艦内の何処かへと隠れる始末。しかも、技術士までもが拳銃自殺してしまい、あっという間に艦内の生存者の数はターカーとキャスパーを含めて、わずか5人になってしまった。
このままでは、海底の潜水艦内で餓死するか、タコに喰われるかのどちらかになってしまう…! そんな危機的状況の中、ターカーはようやくキャスパーを発見し、再び手錠をかけた。そこでリサは、潜水艦の脱出艇に乗って、タコに襲われて穴だらけになっている潜水艦から脱出する事を提案したのである。その提案に従い、潜水艦内を移動する4人とリサ。ところが、その時であった。突如伸びてきたタコの触手が5人に襲いかかり、リサをかばった黒人マッチョがタコに喰われてしまったのである。ターカー達は悲しみにくれながらも、なんとか脱出艇まで到着した。4人は脱出艇に乗り込み、水中に放った固形タンパク質でタコの気がそらされている間に、潜水艦を脱出したのであった!
脱出艇は海上に着くと、そこにはちょうど豪華客船が。さっそくターカー達は助けを呼んだのだが、その船はキャスパーの仲間の組織がすでに乗っ取っていた船で、油断していたターカー達3人は船倉に軟禁されてしまったのである。その上、食料を求めた巨大タコが海上に浮上し、豪華客船を襲い出した。
という話のこの映画、「放射能によって巨大化したタコ」という古い素材を使いながらも、潜水艦パニックの要素も取り入れて、なかなか新鮮に観せてくれる。潜水艦のシーンはなかなか丁寧に作られているし(と言ったって艦内の人間ドラマはドロドロだけど)、艦内からの脱出も子供騙しな手段ながら、観客を妙に納得させてしまうところが凄い。おまけにポスターの「タコが豪華客船を襲うシーン」がラスト数分というのは、まるで昔の怪獣映画を連想させてくれる。
しかし本作、やっぱりバカ映画であった。映画の最初の方に、ターカーが同僚と2階のベランダから、外を歩いている美人に見とれている…というシーンがあるのだが、いつの間にか2人は2階から1階に瞬間移動している!(このターカーの瞬間移動の能力(?)、彼は映画のクライマックスで再び発揮させる。このシーンは実はラストへの伏線…なワケないか)その他にも、豪華客船が乗っ取られていても乗客は誰1人としてその事態に気づいていなかったり、「巨大タコは善人と悪人の区別がつく」なんてトンデモない設定が突然でてきたりと、凄まじい限りの馬鹿の大行進である。というわけで本作は、50年代にアメリカで大量に作られた「カップルでビール飲みながらイチャついていても内容のわかるB級怪獣映画」の再現ともいえる作品だ。軟弱な怪獣映画が幅をきかせている今でこそ、こういう映画は貴重と言えるのである。
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